これまでの旭化成建材の説明は、「データ偽装は、たまたま、一人の担当者が行なったもの」という趣旨であったと理解している。ところが、2015.10.29 の新聞報道等によると、当該担当者が関与していない工事案件でも複数のデータ偽装が見つかったという。
これは今までの説明と異なり、データ偽装が少なくとも複数看過されていた・・・もっと辛辣な言い方をすると、「会社ぐるみ」という事を示しているものであり、今後大問題に発展する気配が濃厚である。
今にして思えば、販売会社が早々に「4棟立替」を提示したのは、「当該マンションだけの問題である」として幕引きを図り、他の物件への波及を避けたい意図があったと言われても仕方ない事であろう。この経緯を見ると、御巣鷹山に墜落した日航ジャンボ機の原因究明時に、「当該機体特有の問題である」として、構造設計等への問題の波及を恐れたボーイング社の対応と同じ精神構造と言える。販売会社は少なくともここでは過去に学んでいると思われる。
そうは言っても、マスコミ各社の記事に見える業界関係者の「本音」、業界の裏側に精通している人の匿名発言など読んでいると、氷山の一角という気もしないでもないが・・・。それだけ建設業界の余裕のなさは日常茶飯事で深刻なんだろう。
結局、多重下請け構造の中で、納期が決まっていて、しかもそれは余裕のないスケジュール。「すべてがうまくいく」という前提での線引きになっているのが、「ちょっと待て、やり直し」ということができない元凶のような気がしているなあ。どこかで見たような計画だなあと思ったら、先の大戦における旧日本軍、就中陸軍の作戦(たとえば、インパール作戦)と同じだと気づく。数限りない作戦失敗例から何も学んでいないという事例であろう。
戦後日本教育において、「失敗例から学ぶ」という領域をないがしろにしてきたツケが、またしても出てきたとも言える。成功例をいくら分析しても、そこから得られる教訓は、失敗例の分析から得られる教訓に比べると、遙かに少ない。失敗の中にこそ学ぶべき事が多く含まれている。これを良い機会として、業界が変わってくれれば良いのだけど、どうもそうはならないようだ。ほとぼりが冷めたらまた同じ事が繰り返されそうな悲観的気分だなぁ。杞憂であることを望むが。
[15/10/30:Fri]